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ヤッスホユック
大村 正子 アナトリア考古学研究所研究員
遺跡の概要
ヤッスホユック遺跡
ヤッスホユック遺跡はトルコ共和国クルシェヒル県チャイアウズ村に位置します。首都アンカラから南東約170km、カマン・カレホユック遺跡から東約30 km、国道260号線の直ぐ北側に位置する遺丘です。
アナトリア考古学研究所は1986、1988、2000、2002年の4度にわたり、中央アナトリアの一般調査の中でこの遺跡及びその周辺を踏査し、遺物の採集を行いました。過去の踏査、表採調査の結果を受けて、2007–2008年にはヤッスホユックの磁気探査、地形測量、写真撮影及び表採を行いました。
ヤッスホユックは南北500m、東西625m、高さ13mの丘状遺跡です。遺丘の東斜面は採土により一部、南部分も、道路建設のため、削り取られていますが、それらを除くと保存状態は良好です。
ヤッスホユックの頂上部は、周縁部を市壁と思われる高みによって囲まれており、その内側に三つの高まりが確認されています。頂上部で行った磁気探査では中央部の最も高い部分に長さ約45–50m、幅約40mの王宮または神殿と考えられる大遺構の存在が明らかになりました。またこれに付随すると見られる幾つかの小遺構、第2の高まりに存在すると見られる別の遺構の一部も見出されました。
表採調査では,カマン・カレホユック第II層と平行する鉄器時代、及び同第IIIb層、第IIIc層に平行する紀元前2千年紀前半すなわち中期青銅器時代の土器片が採集されています。磁気探査で見出された大遺構の年代付けについては、現段階で断定することはできませんが、紀元前2千年紀前半と1千年紀前半の二つの可能性が考えられます。第1の可能性は,紀元前2千年紀前半の重要な遺跡であるアジェムホユックで発見されている宮殿址に比較的類似していることから、宮殿が見つかるのではないかと考えられています。ヤッスホユックは遺跡の規模から言っても,キュルテペ、アジェムホユックに匹敵します。第2の可能性,つまり前1千年紀前半の可能性は,調査前に、地元民がアンカラの博物館に持ち込んだ後期ヒッタイトの象形文字で書かれた鉛製の手紙文書の存在から考えられます。
2008年度ヤッスホユック調査は独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究B)の交付を受けて行われました。