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カマン・カレホユック
大村 幸弘 アナトリア考古学研究所長
第24次カマン・カレホユック発掘調査(2009年)
調査目的
第24次カマン・カレホユック発掘調査は、6月29日(月)に開始、8月28日まで行ないました(写1)。カマン・カレホユックの発掘調査目的は、北区に於ける『文化編年の構築』、南区に於ける『各文化層の集落形態の把握』です。 北区では、昨年度設置したXXXV区とXXXVI区の2発掘区で調査を行いました。これらの発掘区では『文化編年の構築』とともに、両発掘区の東側で検出されている第IIIa層—ヒッタイト帝国、第IIIb層—ヒッタイト古王国、第IIIc層—アッシリア植民地時代の建築遺構を明らかにすることを目的としています。
写真1:今年度発掘終了時の北区・南区の様子.
カマン・カレホユック南西側から
北区の遺構
今シーズンは、XXXVI区を中心に、昨年終了時の第I層の建築遺構を取り外した状態から調査を継続しました。XXXV区の第I層では、昨年度10基を超す掘り込みのイスラームの墓が確認されていましたが、今シーズンはXXXVI区でも人骨2体を確認しています。これらの出土状況を観察したところXXXV区で検出しているイスラームのものとは埋葬形式が明らかに相違しており、第IIa層に帰属する可能性が高いと思われます。
南区の遺構
写真2:今年度発掘終了時の南区の様子.
上がXXXIV区,下がLVII区
昨シーズンは第IIc層、つまり前8世紀の建築遺構の発掘調査を行いました。この調査の目的は、第IIc層の文化がその直下に位置する第IId層から影響を受けているか否かを確認することでした。第IIc層がほぼ3建築層に分かれることがほぼ明確になっていましたが、今シーズンはそれらの建築遺構の精査とそれらの一部を取り外す作業を行いました。中でも第IIc層の第1建築層に年代付けられる深さ1mを超す半地下式の建築遺構の床面を取り外したところで新たな展開がありました。LVII区のR142とXXXIV区のR138では、床面を外したと同時に両建築遺構に附属する床面を確認することができました。更に遺構内の周辺にはベンチを思わせる施設も確認しました。また、柱穴も等間隔で検出され第IIc層の建築技法と第IId層のものに類似性が認められました(写2)。
LVI〜LVIII区の3発掘区で第IIc層の建築遺構を取り外したところ、第IId層のものと考えられる建築遺構を確認することが出来ました。特に、今回確認した建築遺構は、幾つかの顕著な特徴を兼ね備えているのが特徴です。一つは半地下式であり石壁は僅かに斜めに削られた面に貼付けるような形になっていると言うことです。二つ目は、柱穴が数多く確認されたということです。三つ目は部屋をなす遺構のコーナーが丸みを帯びていることです。また、もう一つ加えるとすれば強い火災を受けていることです。この中から出土している彩文土器は、波状文、幾何学文が中心であり第IIc層で検出されているものとは様式的にかなり異なっていますが、両層の建築形態を比較すると幾つかの類似点も認められます。今後の更なる調査、研究を待つ以外ありませんが第IIc層の文化は第IId層の文化の流れの中で捉えることが出来るのではないかと考えています。
出土遺物
写真3:今年度南区出土彩文土器
今シーズン出土した遺物の多くは、前1千年紀のものが中心です。特に、第IIc層、第IId層からは彩文土器(写3)を始めとする数多くの土器、青銅製品、鉄製品が出土しています。これらの中で第IIc層、第IId層の彩文土器は、これまでアナトリア考古学の中で言われていた所謂『暗黒時代』の文化を解明する上では大きな手掛かりになるのではないかと考えています。
謝辞
カマン・カレホユックの発掘調査は、これまで多くの助成団体から研究助成金、補助金の交付を受けて継続しております。ここに改めて、感謝申し上げます。2009年度に助成頂いた団体は以下の通りです。