お知らせ(2012年度掲載分)

■トルコ外交官グループ来所(29/Mar./2013)

中央アナトリアにも春がぐんぐん近づいてきています。三笠宮記念庭園の花々も咲き始め、高原の緑も一段と濃くなってきています。もうすぐ本格的な春の到来です。それとともにカマン・カレホユック考古学博物館、三笠宮記念庭園、そしてアナトリア考古学研究所も訪ねてくる人々で賑わい始めました。

3月22日(金)には、ネジャット・ウトゥカン元在日トルコ大使の呼びかけで、元国連トルコ大使、元駐米トルコ大使ら、家族も含めて45名がカマンにお出でになりました。博物館のセミナールームで、当研究所の松村公仁研究員が、研究所の活動、遺跡の発掘調査についてパワーポイントを使いながら説明し、その後、松村研究員、博物館のプナル学芸員等の案内で博物館に展示されている遺物を一つ一つ丁寧に見学しました。案内中に彼らから次々と質問が飛び出し、それに答える研究員、学芸員とのやりとりで、何度となく楽しそうな笑い声に博物館内は包まれました。お出で頂いた方々の中には日本のトルコ大使館に駐在したことのある元外交官もおり、時折当時の思い出話にも花がさきました。博物館の後、春まだ浅きではありますが三笠宮記念庭園、そしてアナトリア考古学研究所内をご覧になり、午後3時に研究所を離れアンカラへ戻られましたが、研究所内で現地の若者が出土遺物の修復作業、遺物の実測作業、実測図面のコンピューターへの入力作業をしている様子を丹念に観察されていたのが特に印象的でした。今シーズンも多くの人々が博物館、庭園を訪ねて来るものと思います。(2013年3月29日)

トルコ外交官グループ来所 (1) トルコ外交官グループ来所 (2) トルコ外交官グループ来所 (3) トルコ外交官グループ来所 (4) トルコ外交官グループ来所 (5) トルコ外交官グループ来所 (6) トルコ外交官グループ来所 (7) トルコ外交官グループ来所 (8)
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■第23回トルコ調査研究会終了(23/Mar./2013)

第23回トルコ調査研究会—カマン・カレホユック鉄資料の分析結果とその解釈—は、3月16日(土)、東京大学本郷キャンパス理学部2号館講堂で開催されました。今回の研究会のテーマとして、鉄は、いつ、何処で、誰によって造られたものなのかをあげました。これらの問題は何れも容易に解明出来るものではありません。これまでの研究会では、層序に重点を置いて調査を進めてきたカマン・カレホユックの鉄資料を駆使しながら、幾つかの問題点−鉄器時代の開始時期、鋼の問題、ヒッタイト文書に刻まれている「良質の鉄」とはどのような鉄か−などを提起して参りました。今回の研究会では、大森貴之氏が、カマン・カレホユック第IIIc層、アッシリア商業植民地時代最下層の可能性の高い建築遺構内から出土した鉄資料の放射性炭素年代の測定値として、2570-2335calBCEであることを発表、そして、昨年出土した鉄資料の分析結果が各研究者によって次々と報告され、その後、それらの分析結果を基に愛媛大学の村上恭通氏の司会で討論が行われました。第IIIc層出土の鉄資料が、スラッグか鉄鉱石か、また、鉄資料の年代測定について、熱のこもった討論が行われました。スラッグに関していいますと、今回分析した鉄資料はスラッグとするには難しい、鉄鉱石と考えるのが妥当であろうとする意見が多数を占めました。今回の研究発表の中で、鉄に対する認識は青銅を生産する過程で出来上がってきたのではないかとする仮説が発表者からもあり、今後の一つの課題として考える必要があります。カマン・カレホユックは層序を中心とする発掘調査を行ってきておりますので、銅生産、そして青銅生産から鉄生産への変遷過程を今後の調査で明らかにすることが出来るのではないかと期待しています。今シーズンは4月初旬からビュクリュカレの発掘調査、6月中旬からカマン・カレホユック、8月下旬からはヤッスホユック遺跡の調査が始まりますが、何れの遺跡からも出土しているすべての金属資料は、アナトリア考古学研究所に保存されていますので、層序を縦軸に置きながらそれらを再度並べることにより、今回提起された問題点を解明する糸口を見出すことが出来ればと考えております。(大村幸弘)(2013年3月23日)

*第23回トルコ調査研究会は「競輪公益資金」の補助を受けて開催されました。logo


第23回トルコ調査研究会 (1) 第23回トルコ調査研究会 (2) 第23回トルコ調査研究会 (3) 第23回トルコ調査研究会 (4) 第23回トルコ調査研究会 (5) 第23回トルコ調査研究会 (6) 第23回トルコ調査研究会 (7) 第23回トルコ調査研究会 (8) 第23回トルコ調査研究会 (9) 第23回トルコ調査研究会 (10)
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■世界婦人デー(11/Mar./2013)

アナトリア考古学研究所とカマン・カレホユック考古学博物館は、3月8日(金)、世界婦人デー共催で講演会を行いました。集まった女性たちの多くが自分たちの家で作ったお菓子、ビョレッキ(春巻きのようなもので中には白チーズなどが入っている)を持ち寄ってきては、博物館が出したチャイ(トルコティー)を飲みながら2時間程楽しんでいきました。学芸員として1月にカマン・カレホユック考古学博物館に赴任してきたレイラさんが博物館を丁寧に案内してくれましたが、次々飛びだしてくる質問には大分苦労していたようです。彼女にとっては赴任後初めての案内でしたが、集まった方々からはとても判りやすい説明だったと大好評でした。3月に入りカマンもすっかり春らしくなってきましたし、これからは日一日と三笠宮記念庭園、考古学博物館は賑わってくるのではないかと思います。庭園の木々の芽もここ数日の温かさでかなり膨らんできました。(2013年3月11日)

世界婦人デー2013 世界婦人デー2013 世界婦人デー2013 世界婦人デー2013 世界婦人デー2013
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■アナトリアにも春がやってきました(6/Mar./2013)

長かった冬も終わりやっと中央アナトリアにも春がやってきました。三笠宮記念庭園の木々の幹も瑞々しくなってきましたし、蕾も膨らんできました。そして池の錦鯉の動きも大分活発になってきました。今年の冬は昨年に較べますと雪が少なかったこともあり真夏の水不足が今から気掛かりです。三月に入り気温も上昇したこともあり、土曜日、日曜日にはカマン・カレホユック考古学博物館と庭園を散策する人々で賑わうようになってきています。4月中旬までが中央アナトリアでは植栽には最適と言われています。近々、クルシェヒル県から三笠宮記念庭園へと言うことで松、樅、楓などの苗木百本程を頂くことになっています。苗木の植栽が本格化しますと村も長い冬眠から醒めたように急に活気が出てきます。その日を心待ちしている今日この頃です。(2013年3月6日)

2013年アナトリア高原の春 (1) 2013年アナトリア高原の春 (2) 2013年アナトリア高原の春 (3) 2013年アナトリア高原の春 (4)
2013年アナトリア高原の春 (5) 2013年アナトリア高原の春 (6)
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■研究所のチビとハナは元気にしています(4/Mar./2013)

昨年の7月、スィヴァス県カンガル郡にある軍の駐屯地から頂いたカンガル犬のチビとハナは元気にしています。生まれて8ヶ月が過ぎ、体は一人前に大分大きくなりましたがまだまだ子犬です。夜になると体をすり寄せてきたりでかなりの寂しがり屋です。これまでは村から何頭もの犬が庭園内に入り込み自由気ままにのんびりと散歩していましたが、チビとハナが研究所に来たことですっかりその蔭もひそめてしまいました。(2013年3月4日)

カンガル犬 2013年3月 (1) カンガル犬 2013年3月 (2) カンガル犬 2013年3月 (3)
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■オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所(3/Mar./2013)

2月24日(日)、新任のオメール・チェリッキ文化・観光大臣が、クルシェヒル県のオズデミル・チャカジャック知事、クルシェヒル県選出のアブドゥラ・チャルカン、ムザフェル・アルスラン国会議員、ムラット・ススル文化・観光省史跡・博物館総局長等とともにアナトリア考古学研究所、カマン・カレホユック考古学博物館、三笠宮記念庭園を訪ねてきました。トルコでは、1月24日に内閣改造が行われ、エルトゥールル・ギュナイ前文化・観光大臣の後任として与党の若手のホープ、オメール・チェリッキ氏が新大臣に就任されました。就任後、超多忙を極めている中、初めての視察地としてカマンのアナトリア考古学研究所、カマン・カレホユック考古学博物館を選んで下さったとのことでした。約3時間の滞在中、研究所で行っている土器実測、修復、図面作成、博物館では展示遺物などを一つ一つ丁寧にご覧になっていたのが印象的でした。新任大臣の来訪と言うこともあり、報道関係者も数多く研究所も久しぶりの大賑わいでした。(2013年3月3日)

オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所 (1) オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所 (2) オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所 (3) オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所 (4) オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所 (5) オメール・チェリッキ新文化・観光大臣来所 (6)
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■アナトリア高原は真冬に入りました(10/Jan./2013)

2013年に入っても雪もなく比較的温かな日々が続いておりましたが、数日前からアナトリア高原全体が冷え込み始め、ついに一昨々日(7日)は天候が急変し雪になりました。高原全体は銀世界です。三笠宮記念庭園も雪に包まれました。今シーズン初めての大雪です。それでも昨年と較べますと雪はかなり少なく寒さもそれほど厳しいものではありません。これからアナトリア高原も本格的な真冬に入ります。アナトリア考古学研究所のあるチャウルカン村は2月末まで、雪で何度か陸の孤島になるかもしれません。庭園の木々の幹が瑞々しくなるのを待ちながら、研究所内で昨年出土した資料整理を行っているところです。(2013年1月10日)

2013年アナトリア高原の冬 (1) 2013年アナトリア高原の冬 (2) 2013年アナトリア高原の冬 (3) 2013年アナトリア高原の冬 (4)
2013年アナトリア高原の冬 (5) 2013年アナトリア高原の冬 (6) 2013年アナトリア高原の冬 (7) 2013年アナトリア高原の冬 (8)
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■考古学の学校(5/Nov./2012)

九月中旬、トルコの初等教育学校は、3ヶ月間の長い夏休みも終わり授業が始まりました。七月に夏休みを利用しての「考古学の学校」(カマン・カレホユック考古学博物館とアナトリア考古学研究所共催)は大好評でしたが、学校が始まってからも「考古学の学校」をまた開いて欲しいとの要望が幾つも博物館に寄せられました。クルシェヒル県にはカマン郡、アクプナル郡、チチッキダウ郡、中央郡、ムジュル郡と五郡ありますが、九月初旬に各郡の郡長さん、市長さん、村長さん等を博物館に招き、彼らと話し合ったところ、多くの郡、市、村が車を提供してくれることを確約してくれました。これは予想外でした。学校の方から児童をカマン・カレホユック考古学博物館に連れてきてくれることになったのは嬉しい限りです。児童をどのようにして博物館まで連れてくるかが一番難しい問題でしたので、彼らが協力を約束してくれたことは何よりでした。

学校の授業の代わりに博物館で歴史、考古学の授業を行うということでアナトリア考古学研究所と博物館が共催でこのプロジェクトを進めることになります。早速、11月1日、カマン郡のイーサホジャル村の小学校の児童が先生と一緒に博物館を訪ねてきました。当日、博物館へやってきたイーサホジャル村の児童は、楔形文字、古代の封印についての授業を学芸員のプナルさんから1時間半程受けました。授業が楽しかったのか、子供たちからは多くの質問が出てきてしまいプナルさんもてんてこ舞いになるほどでした。それと博物館の真ん中に置かれている遺跡の模型は大人気で児童たちの目がキラキラ輝いていました。

日本の外務省のODAで建設されたカマン・カレホユック考古学博物館ですのでトルコの子供たちにも大いに利用してもらいたいと思います。 今後も各郡の初等教育学校の児童がカマン・カレホユック考古学博物館を訪ねてくることになっています。(2012年11月5日)

考古学の学校(1) 考古学の学校(2) 考古学の学校(3) 考古学の学校(4) 考古学の学校(5) 考古学の学校(6)
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■中央アナトリアは紅葉が始まりました(25/Dec./2012)

あれだけ暑かった八、九月が過ぎ、十月に入ったと同時に朝夕の気温が一気に下がってきました。十月、トルコ語でエキム、つまり播種を意味します。高原のいたるところで小麦の播種が行われています。十月も下旬に入りますと、早朝の気温は、発掘現場でも6度から7度と息が白くなるほどの寒さで、セーターを着込んでの発掘現場となっています。空気が澄んできたためでしょうか、遠くで話している村人の声が澄み切った空気の中で風に流されて聴こえてきます。寒くなってきたこともあり三笠宮記念庭園の柳、ポプラ等の葉は多少黄色みがかってきました。本格的な紅葉はまだですが、間違いなく本格的な紅葉の時期に近づいてきています。

先月の末ぐらいからカマンの町の道端のいたるところに山積みの石炭を見かけるようになりました。研究所の側のチャウルカン村でも家々の前で冬場の燃料にする薪作りが盛んに行なわれています。キャンプの食堂にはつい先日薪ストーブが設置されました。いつ寒さが来てもいいようにと薪、石炭は十分に用意をしました。チャウルカン村では各家庭でトマトのペースト作り、トゥルシュ(漬け物)作り、冬期に食べるユフカ(薄い紙状のパン)焼きにも余念がないようです。ユフカは鉄板の上で焼かれますが、このパン焼きの周りには沢山の子供たちが焼きたてのパンを食べようと集まっているのが何とも微笑ましい光景です。

7月から9月中旬まで調査で大いに活躍していた、中学生、高校生、大学生が去り、発掘現場は大分静かになりました。現在、ヤッスホユック遺跡の発掘を行っていますが、時折ホルトゥムとよばれる小さな竜巻がフルイをかけ終わった乾燥した土を巻き上げています。八百屋の店先にはラグビーボール形の地物のメロン、そして葡萄が大量に積まれています。もうじきしますと葡萄をつぶし、葡萄液をじっくり煮込んだペクメズと呼ばれるゼリー状のものがカマンの町の水曜日の市場に顔を出し始めるものと思います。(2012年10月25日)

2012年アナトリア高原の秋 (1) 2012年アナトリア高原の秋 (2) 2012年アナトリア高原の秋 (3) 2012年アナトリア高原の秋 (4)
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■考古学フィールドコース(2012年)終了(28/Sep./2012)

考古学フィールドコース(2012年)は、7月9日から9月22日にかけて4回行われました。各回(2週間)、4名から5名の学生が発掘調査に参加、調査隊の時間割に合わせ調査隊員と行動を共にしました。参加した学生は、毎日夕方6時に行われるミィーティングで発表する準備、研究テーマとして与えられた小遺物の実測、撮影、研究等に毎日追われていました。期間中、ヒッタイト帝国の都ハットゥシャ、フリュギア王国の都ゴルディオンを訪ねたことで一息が付けたのではないかと思います。参加者は無事キャンプを離れましたが、期間中に何一つ事故もなく、考古学フィールドコースを終了出来たのが何よりでした。考古学フィールドコース(2013年)開催に関する詳細な情報は近々アナトリア考古学研究所のHPに掲載する予定です。(2012年9月28日)


考古学フィールドコース2012第四回 (1) 考古学フィールドコース2012第四回 (2) 考古学フィールドコース2012第四回 (3) 考古学フィールドコース2012第四回 (4) 考古学フィールドコース2012第四回 (5) 考古学フィールドコース2012第四回 (6) 考古学フィールドコース2012第四回 (7) 考古学フィールドコース2012第四回 (8)
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■Workshop EBA 2012(15/Sep./2012)

アナトリア考古学研究所、アーヒ・エヴレン大学、中東工科大学の共催で、9月22日、23日にかけて、カマンのアナトリア考古学研究所で“Workshop EBA 2012”(アナトリアに於ける前期青銅器時代)のワークショップを開催しました。今回のワークショップには欧米、トルコ、日本の研究者が参加、活発な討論が行われました。現在、アナトリアの前期青銅器時代には数多くの問題点がありますが、その中でも特に今回のワークショップでは前3千年紀の前期青銅器時代と前2千年紀前半の中期青銅器時代の境界線を何処に置くかで大激論が交わされました。この時期は中間期、あるいは移行期と言われていますが、メソポタミアとアナトリアがどの段階で密接な関わりを持ち始めたのか、印欧語族の移動時期等を考察する上で極めて興味深い問題点を含んでいます。特に、ビレジック大学の発掘調査では、これまでメソポタミアからの技術的導入によって生み出されたとする土器形態が、西アナトリアのキュルルオバでは前期青銅器時代の土器の変遷過程をもとに、メソポタミアではなく西アナトリアで変遷を重ねながら作り出されたものとする仮説を発表し注目されました。ワークショップ期間中は熱のこもった討論が研究者間で行われ、もう一度集まって討論を行いたいとする参加者も多く、再度ワークショップの開催を考える必要がありそうです。

今回のワークショップ開催には、日本の東京倶楽部が助成して下さいました。誌上を借りて厚くお礼を申し上げます。(2012年9月25日)


Workshop EBA 2012 (1) Workshop EBA 2012 (2) Workshop EBA 2012 (3) Workshop EBA 2012 (4) Workshop EBA 2012 (5) Workshop EBA 2012 (6)
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■N.オズギュッチ教授来所(30/Aug./2012)

エルビスタン・カラホユック遺跡、キュルテペ遺跡、アジェムホユック遺跡、サムサット遺跡等、アナトリアの各地で数多くの考古学的発掘調査を行い、中近東考古学に多大な貢献をされているN.オズギュッチ教授が、8月26日(日)にアナトリア考古学研究所にお出でになりました。先生は、最初にアナトリア考古学研究所が発掘調査を進めているクズルウルマック川の側に位置するビュクリュカレ遺跡にお出でになり、その後カマン・カレホユック考古学博物館の展示コーナー、アナトリア考古学研究所を丹念にご覧になられました。研究所ではビュクリュカレ出土のガラス製品、印影そして今シーズン出土した尖底の大量の土器を一つ一つ手に持ちながら楽しそうに眺められていたのが印象的でした。特に、先生が専門とされている印章、印影にはじっくり時間をかけて観察しておられました。ご自分が研究所に寄贈された蔵書を図書室で懐かしそうな顔付きでご覧になっておりました。96歳になられた現在でも論文を盛んに執筆されており、今もって我々を叱咤激励して下さっています。アナトリア考古学研究所に一泊され、27日(月)、次の目的地であるアッシリア商業植民地時代の都市遺跡であるアジェムホユック遺跡に向けて発たれました。この遺跡は先生が最初に発掘を手掛けられたところで、現在は教え子でアンカラ大学のA.オズタン教授が発掘調査を継続して行っており多くの成果があげらています。(2012年8月30日)


N.オズギュッチ教授来所 (1) N.オズギュッチ教授来所 (2) N.オズギュッチ教授来所 (3) N.オズギュッチ教授来所 (4) N.オズギュッチ教授来所 (5) N.オズギュッチ教授来所 (6)
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■考古学の授業(21/Aug./2012)

アナトリア考古学研究所は、カマン・カレホユック発掘調査を通して、発掘に参加しているトルコの子供たちを対象とした『考古学の授業』を今シーズンも開始しました。昨年は金曜日の12時15分からでしたが、今シーズンは土曜日の12時15分から約70分間行っています。授業の始めは、カマン・カレホユックの層序について、そしてレベルの使い方、その後に発掘区に全員が入り発掘区の担当者が解説し、全員で討論する形を取っています。討論会は時として白熱して時間が経つのをすっかり忘れている時があるほどです。この授業によって少しでも考古学、発掘調査に興味を持ってくれるようになれば嬉しい限りです。(2012年8月21日)


考古学の授業 (1) 考古学の授業 (2) 考古学の授業 (3) 考古学の授業 (4)
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■考古学フィールドコース2012途中経過(13/Aug./2012)

7月9日に開始した考古学フィールドコースは、第一回目(7月9日〜7月22日)、第二回目(7月23日〜8月5日)、そして現在第三回目のフィールドコースを行っているところです。第三回目には日本からの学生が4名参加しています。つい先日まで40度を超す暑さが連日続いていましたが、最近の朝夕の涼しさには何処となく秋の気配を感じるほどです。コースに参加している学生は、隊員と同じ時間割で5時15分の朝食から一日がスタートしています。発掘現場では、慣れないトルコ語の世界に悪戦苦闘をしているようですが、ここ二三日でトルコ人の学生、作業員ともすっかり打ち解けるようになっています。2時には発掘現場の作業が終了、キャンプに戻り昼食を取り、6時のミィーティングまではシャワーを浴びたり、ミィーティングの準備をしながら時間を過ごしています。7時半の夕食の後は、与えられた遺物の研究のため研究所の図書館で10時近くまで資料を探したりする作業を行っています。2週間のフィールドコースの期間は、最初は長く感じるようですが数日経つとキャンプ、現場にすっかり馴染み気がつくと終了していたと言う感じのようです。折角の機会ですので、色々と体験をしてもらうことが出来れば嬉しい限りです。(2012年8月13日)


考古学フィールドコース2012第二・三回 (1) 考古学フィールドコース2012第二・三回 (2) 考古学フィールドコース2012第二・三回 (3) 考古学フィールドコース2012第二・三回 (4) 考古学フィールドコース2012第二・三回 (5) 考古学フィールドコース2012第二・三回 (6)
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■アナトリア考古学研究所にカンガル犬の子犬が二頭寄贈されました(8/Aug./2012)

一昨年、アナトリア考古学研究所にカンガル犬が一頭寄贈されましたが、前の持ち主が羊の番犬として再度使いたいと言う強い希望で残念ながらお返しすることにしました。研究所にもすっかりなれていたこともあり残念でしたが、今では元気に羊の群れの番をしているようです。カンガル犬のパシャ(名前)を返したと言う話しを何処から聞いたのでしょうか。スィヴァス県、カンガル郡(カンガル犬の名産地)の軍の駐屯地から、カンガル犬の子犬が生まれたので二頭アナトリア考古学研究所に寄贈したいとの申し出を頂きました。早速、子犬を引き取りに行ったところ20日前に生まれた本当に可愛い子犬を研究所の番犬にと言って下さいました。この子犬の父親はトルコのカンガル犬の品評会で一位になったとのことです。カンガル郡からカマンまでは車で8時間ほどかかりますが、7月19日、二頭の子犬は元気に無事研究所に到着しました。翌日から研究所の庭を走り回っており、すくすく育っています。(2012年8月10日)

カンガル犬 (1) カンガル犬 (2) カンガル犬 (3) カンガル犬 (4)
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■土器に関する産地同定で博士号取得(9/Aug./2012)

東京理科大学の中井泉教授の研究室に所属し、カマン・カレホユック発掘調査にも4シーズン隊員として参加していた中国系マレーシア人のウイリー・ボン・シュン・カイが博士課程を修了、博士号を取得しました。彼の研究テーマの一つは、カマン・カレホユック出土の土器の産地同定で、The Development and Application of Heavy Mineral Analysis, Single-mineral Geochemistry Analysis and Trace Heavy Element Analysis to the Provenance Study of Archaeological and Forensic Materials、『考古学・法科学試料の起源推定のための重鉱物分析、単一鉱物地球化学分析および微量重元素分析法の開発と応用』として研究をまとめました。(2012年8月9日)


■中央アナトリアは真夏に入りました(2/Aug./2012)

7月中旬に入り、アナトリア高原は真夏に入りました。連日素晴らしい快晴です。殆ど雲も見ることはありません。キャンプを張っているチャウルカン村の裏山にあるバランヌ山からは、夜9時過ぎになりますと強い風が吹き始めます。ゴーとものすごい音を立てながら吹き下してきます。その風も太陽が出始めると同時にぴったり止まるのが不思議です。

アナトリア考古学研究所周辺のヒマワリが見事な大輪を咲かせています。乾燥し切ったアナトリア高原にはヒマワリが実に似合います。このヒマワリの殆どは食用油用とのことです。研究所内にある梨、林檎、アーモンド、胡桃等の実もたわわになっています。8月に入ると何れも食べられそうです。

真夏に入ったと同時に、高原の小麦の刈り入れも一気に進みだしました。今が最も稼ぎ時なのでしょう。大型の刈り入れ用のコンバインダーが国道を行ったり来たりしています。大型のコンバインダーは国道を占拠しています。この真夏も8月20日頃まで続きます。8月の中旬になりますと早朝の気温が一気に下がり出し秋の気配を感じるようになりますが、それまでにはまだまだ時間がかかりそうです。(2012年8月2日)

2012年アナトリア高原の真夏 (1) 2012年アナトリア高原の真夏 (2) 2012年アナトリア高原の真夏 (3) 2012年アナトリア高原の真夏 (4)
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■考古学の学校オープン(30/Jul./2012)

アナトリア考古学研究所とカマン・カレホユック考古学博物館の共催で子供たちを対象とした考古学の学校がオープンしました。昨年に引き続いて今シーズンも7月、8月の小学校の夏休みを使い、7月16日〜7月28日までの2週間の予定で行っております。今回のクラスの特徴は、研究所のあるチャウルカン村、カマン町から予想を大幅に超す参加希望者があったことです。断るのに一苦労しました。今回の学校には、最終的に17名の児童が参加しております。考古学の学校ですので、石皿で小麦粉を作り出す作業、土器を作る作業、装身具の作成、土器の測定、粘土板の作成、カマン・カレホユック遺跡での発掘体験等盛り沢山の内容となっています。参加者は、女子児童が多く、男子の児童は数名が参加しているのみです。25日の水曜日には、参加者がカマン・カレホユック遺跡に入ってきました。トルコ語で、一角の人間になるには、『チェキルディクテン』、種からと言う諺があります。つまり小さい時から鍛えると言うことでしょうか。このクラスからもひょっとして将来的に考古学徒が出てくるかもしれません。(2012年7月30日)

考古学の学校(1) 考古学の学校(2) 考古学の学校(3) 考古学の学校(4)
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■博物館学フィールドコース(2012年)終了(25/Jul./2012)

昨年度に引き続いて、6月25日から国際交流基金、トルコ文化・観光省、アナトリア考古学研究所の共催でカマン・カレホユック考古学博物館、アナトリア考古学研究所の施設を使い博物館学フィールドコースが行われました。

今回は、第一回目が6月25日〜7月5日、第二回目が7月9日〜7月19日まで行い、トルコの地方博物館の学芸員が延べ24名参加しました。国際交流基金が送って下さった展示専門家の永金宏文氏が全期間を通して講師をして下さいました。これまでこのようなコースがトルコで開かれたことがなかったこともあり、多くの学芸員の参加希望者がありました。永金氏は、展示を行う上での基本構想の立て方、その構想を基に模型の作成、さらには実際にどのように遺物を展示するか等を学芸員の手を取りながら一つ一つ丁寧に指導して下さいました。その指導ぶりが参加していた学芸員にも通じたのか、何れの参加者も講師を務めた永金氏に何度も何度も質問をしながら作業を進めていたのが極めて印象的でした。永金氏は、『素晴らしい展示模型を作製するよりも何をどのように展示するかと言う基本構想をきっちりと持たないでは良い展示にはなりません』、と何度も授業で仰っていたのは恐らくコースに参加した学芸員の脳裏には深く刻まれたのではないかと思います。このコースを通して、トルコの博物館の持つ幾つかの問題点が浮き彫りになりましたが、出来れば来年もこの博物館学フィールドコースを開催したいと考えております。(大村幸弘)(2012年7月25日)

博物館学フィールドコース (1) 博物館学フィールドコース (2) 博物館学フィールドコース (3) 博物館学フィールドコース (4)
博物館学フィールドコース (5) 博物館学フィールドコース (6)
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■考古学フィールドコース2012開始(23/Jul./2012)

7月8日から考古学フィールドコースが始まりました。今シーズンは四回行われることになっています。第一回目が7月9日〜7月21日、第二回目が7月23日〜8月4日、第三回目が8月6日〜8月18日、そして第四回目が9月10日〜9月22日までになっています。各回、4〜5名の日本の学生が参加することになっています。

既に第一回目は終了しましたが、今回は全期間を通してカマン・カレホユック発掘調査に参加するとともに、遺物の実測、遺物研究、プレゼンテーション、日曜日を使って世界遺産の一つであるボアズキョイ、そしてボアズキョイから出土している遺物を数多く展示しているチョルム考古学博物館等を訪ねました。(2012年7月23日)


考古学フィールドコース2012第一回 (1) 考古学フィールドコース2012第一回 (2) 考古学フィールドコース2012第一回 (3) 考古学フィールドコース2012第一回 (4) 考古学フィールドコース2012第一回 (5) 考古学フィールドコース2012第一回 (6)
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■アナトリア考古学研究所退職者の集い(13/Jul./2012)

1985年カマン・カレホユック遺跡で予備調査を行い、1986年には本格的発掘調査を開始しました。これまでカマン・カレホユック発掘調査には、遺跡の南約1.5キロにあるチャウルカン村の村民が労働者としてこれまで数多く参加、その数も延べ人数で優に2500人を超しています。彼らの中には、一年を通してアナトリア考古学研究所に勤務し遺物実測、図面整理、遺物整理、遺物修復等を行うグループ、そして遺跡・研究所の管理をするグループの二つがあり、彼らが研究所の屋台骨となっています。この28年間で20名を超す労働者が退職し、夕方、少し涼しくなると、彼らはよくカマン・カレホユック考古学博物館、三笠宮記念庭園を訪ねてきます。

7月6日(金)の夕方4時に退職者の集いを行ったところ、20名が集まってくれました。最初に博物館を案内しましたが、自分たちが発掘した遺物が展示されていることに目を丸くして何度も何度も覗いて見ていたのが印象的でした。博物館の見学後、研究所の食堂でチャイ(トルコティー)を飲みながら楽しい一時を過ごしました。退職者の多くは、寛仁親王殿下がお亡くなりになったことを新聞等のニュースで知っていました。カマンが淋しくなってしまったと本当に悲しんでいた退職者もあり目頭が熱くなりました。2010年、カマン・カレホユック考古学博物館のオープン式典で殿下と一緒に撮った写真を大事にしていると聞いた時は本当に嬉しくなりました。殿下は村にも我々にも色々な形で色々なものを残して下さったものと今更ながら強く感じています。それらを大切にしながら今後も村と一緒に研究所をもり立てて行きたいと思っております。

彼らと色々話しをしていると、このアナトリア考古学研究所は彼らの協力と理解があってこそ初めて成り立っていることを感じます。心から感謝しなければと思っております。来年も彼らの元気な姿に会えるのを楽しみにしながら今シーズンの調査を進めて参ります。(大村幸弘)(2012年7月13日)

退職者の集い2012年 (1) 退職者の集い2012年 (2) 退職者の集い2012年 (3) 退職者の集い2012年 (4) 退職者の集い2012年 (5) 退職者の集い2012年 (6) 退職者の集い2012年 (7) 退職者の集い2012年 (8)
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■博物館学フィールドコース(2012年)途中経過(30/Jun./2012)

6月25日(月)、国際交流基金、トルコ文化・観光省史跡及び博物館総局、アナトリア考古学研究所の共催で、博物館学フィールドコース(2012年)が、アナトリア考古学研究所、カマン・カレホユック考古学博物館で始まりました。コースは、第一回目が6月25日〜7月5日、第二回目が7月9日〜7月19日までの各々10日間の日程で行われることになっており、20を超すトルコ各地の考古学博物館から学芸員が26名参加することになっています。第一回目にはエフェス、エスキシェヒル、ブルサ、アフロディスィアス、ニーデ、ギレスン、コンヤ、ビレジュック考古学博物館、総局付きの学芸員が、24日の午後、アナトリア考古学研究所に入ってきました。

博物館の展示コンセプトの立て方、出土遺物をどのように展示すれば最も効果的か等を理論と実技で行うことが、フィールドコースの主目的となっています。日本の国際交流基金は、昨年に引き続いて展示の専門家である永金宏文氏を派遣して下さいました。彼らが展示のコンセプトを立てると同時に、展示遺物の処理、修復、さらにはそれらの撮影等に関する授業も、アナトリア考古学研究所の保存修復、撮影の担当者があたっています。実技になるとどの学芸員も真剣な眼差しなり、教室の中が緊張感に包まれてしまいます。なかなかの迫力です。

夕方の6時に行う研究所のミィーティングにも彼らは全員参加しています。毎日、自分たちの考古学博物館についてパワーポイントを使いながら紹介し、博物館が持つ問題点等について討論を行っていますが、我々研究所の所員にとってもトルコの考古学博物館の全体像を知る上で良い機会となっています。

このコースは、トルコ側の要請で昨年に始まり、今シーズンで二年目になりますが、今後のことを考え展示に必要な材料等は総てトルコ国内で入手出来るものだけを使用するようにしています。展示のコンセプトを考えた後に、永金氏とともに、それをどのように具体的に進めて行くか等を学芸員と一緒に試行錯誤しながら作業を進めるのが基本で、このフィールドコースによって、トルコの博物館の展示方法を大幅に変えよう等とは毛頭考えていません。トルコの博物館の展示に少しでも何かお手伝い出来れば嬉しい限りです。

学芸員も月曜日のコースが開始した日は少し戸惑っている感もありましたが、火曜日以降は永金氏に対しても積極的に質問するようになる等、フィールドコースもなかなか熱気を帯びてきました。今週の日曜日には、中央アナトリアの博物館の中でも展示に関して最近注目を集めているチョルム考古学博物館を訪ねることになっています。(大村幸弘)(2012年6月30日)

博物館学フィールドコース (1) 博物館学フィールドコース (2) 博物館学フィールドコース (3) 博物館学フィールドコース (4)
博物館学フィールドコース (5) 博物館学フィールドコース (6)
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■アナトリア高原は初夏を迎えました(11/Jun./2012)

第4次ビュクリュカレ発掘調査が最終段階に入りました。例年ですと、4月のアナトリアは雨の日が多いのですが、今シーズンは意外にも5月に入ってから雨に祟られてしまいました。夕方は毎日のように雷雨に見舞われ、何度か発掘調査も中断したほどでした。そして、5月19日の「青年スポーツ祭」の祝日が季節の分かれ目なのでしょうか。その日を境としてアナトリアも初夏を迎えた感じがします。ここ一週間でアナトリア考古学研究所のあるカマン郡もすっかり緑に包まれ、高原の緑も日一日と濃くなってきております。三笠宮記念庭園の池では2週間ほどかけて行ったクリーニングが完了しました。庭園内の藤棚を始め周辺の野花も競うように咲き誇っています。連日、カマン・カレホユック考古学博物館、三笠宮記念庭園には多くの訪問客,特に近郊の村の小学校の児童で大いに賑わっています。このアナトリア高原の緑の絨毯も6月25日頃を境として黄金色に色付き始め、7月初旬には小麦の刈り入れが本格化するものと思います。そして、高原は日中の気温が40度を超すようになり真夏を一気に迎えることになります。今年の小麦の成長は順調なようでカマンの町も活気づいてきました。(2012年6月11日)

2012年アナトリア高原の初夏 (1) 2012年アナトリア高原の初夏 (2) 2012年アナトリア高原の初夏 (3) 2012年アナトリア高原の初夏 (4)
2012年アナトリア高原の初夏 (5) 2012年アナトリア高原の初夏 (6) 2012年アナトリア高原の初夏 (7) 2012年アナトリア高原の初夏 (8)
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■第34回発掘、一般調査、保存科学国際シンポジウム(2/Jun./2012)

トルコ文化・観光省史跡・博物館総局主催の第34回発掘・一般調査・保存科学国際シンポジウムは、5月28日(月)〜6月1日(金)まで、チョルム市のアニッタホテルで行われました。2011年にアナトリアで行われた発掘調査に関する報告が183、一般調査-92、保村科学-59、計334の研究発表がありました。会には、トルコ、アメリカ、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、カナダ、フランス、オーストリア、ベルギー等の研究者、約300人が参加をしました。チョルムの近くには世界遺産であるヒッタイト帝国の都ボアズキョイを始めとしてアラジャホユック、エスキヤパル、オルタキョイ等、現在盛んに発掘調査が行なわれている遺跡もあり、プログラムの中には遺跡視察が幾つも含まれていたのが今回のシンポジウムの特徴かもしれません。また、会場の側にチョルム考古学博物館があり、ボアズキョイ、オルタキョイ等ヒッタイト帝国時代の遺物が数多く陳列されており、シンポジウム参加者は時間さえあれば博物館通いと大いに賑わっていました。チョルム考古学博物館はオスマン帝国時代の医療施設を改築したもので、陳列遺物と同時に博物館の建物自体もなかなか素晴らしいもので何度でも訪ねて見たいと思う雰囲気が博物館にはありました。

発表に先立ち、ムラット・ススル考古局長が、トルコから欧米等の博物館へ流失した考古遺物の返還運動の現状について詳細に講演をし、さらにこの運動を継続して行くには考古学関係者の協力が不可欠である事を強調しておりました。今回の幾つかの発表の中で、アッシリア商業植民地時代のキュルテペ、フリュギア王国時代のゴルディオン、ヘレニズムのペルガモン、サラガソス等、遺跡保存、考古学の普及活動についてかなりの時間を割いているのも注目されました。

また、今回のシンポジウムで、前2千年紀、ヒッタイト、アッシリア商業植民地時代、前3千年紀の前期青銅器時代に合わせたものが数多くあったことも一つの傾向と考えることができます。特に、これまでアッシリア商業植民地時代の発掘を行ってきていたアジェムホユック、キュルテペ等が、前期青銅器時代に焦点を合わせ発掘調査に本腰を入れ始めたことも、新しい流れだと思いました。中央アナトリアを始めとして前期青銅器時代はアナトリアでは未だ解明された時代とは言えず、今後アナトリア考古学界でも大いに討論されるべき時代かと思います。

アナトリア考古学研究所としましては、第26次カマン・カレホユック発掘調査、第3次ヤッスホユック発掘調査、第3次ビュクリュカレ発掘調査、クルシェヒル県に於ける考古学的一般調査に関する発表を行いました。カマン・カレホユック発掘調査は、第III層の前2千年紀の中でも層序としてアッシリア商業植民地時代とヒッタイト古王国時代の境界線を何処に置くか、初期鉄器時代の第IId層の文化がどのように形成されたか、ヤッスホユック発掘調査の発表では前2千年紀初頭の宮殿形態について、ビュクリュカレ発掘調査ではヒッタイトの建築遺構の年代測定、また、一般調査では銅石器時代の刻文土器の文化圏についてそれぞれ発表を行いました。(大村幸弘)(2012年6月2日)

第34回発掘、一般調査、保存科学国際シンポジウム 第34回発掘、一般調査、保存科学国際シンポジウム 第34回発掘、一般調査、保存科学国際シンポジウム 第34回発掘、一般調査、保存科学国際シンポジウム
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■三笠宮記念庭園のソメイヨシノは満開です(18/Apr./2012)

1993年、9月13日に三笠宮崇仁親王殿下、同妃殿下のご臨席を賜り一般公開された三笠宮記念庭園は、今年度で19年目を迎えました。地元では通称、ジャポンバフチェ(日本庭園)として知られています。一昨年度の7月10日、ジャポンバフチェの直ぐ側にカマン・カレホユック考古学博物館がオープンしたこともあり、昨年は庭園、博物館の入場者数は合わせて六万人を超しました。4月初旬に入り、庭園の木々も瑞々しくなり始めたかと思っていましたら、1991年、日本から運んできたソメイヨシノ等を始めとする桜がこの一週間で咲き始めました。特に、ここ数日の初夏を思わせる温かさで4月17日にソメイヨシノは一気に満開になりました。昨年より十日ほど早い満開です。アナトリア高原も日一日と緑が濃くなってきておりますが、その緑の中にソメイヨシノが見事に調和しています。今週ぐらいから桜を見学に近郊の村々から多くの訪問者が訪ねてくるのではないかと思います。(2012年4月18日)

2012年三笠宮記念庭園のさくら (1) 2012年三笠宮記念庭園のさくら (2) 2012年三笠宮記念庭園のさくら (3) 2012年三笠宮記念庭園のさくら (4)
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■中央アナトリアにも春がやって来ました(11/Apr./2012)

あれほど厳しかった冬も去り、中央アナトリアにもやっと春がやってきました。マイナス20度を超す寒さと今までにはなかったような積雪で、三笠宮記念庭園の池の錦鯉が心配でしたが、元気に越冬したようです。それと今週始めに庭園のソメイヨシノの蕾も少し膨らみ、その一部は咲き始めました。待ちに待った春到来と言うところです。4月中旬から下旬にかけて中央アナトリアも春爛漫を迎えることかと思います。先週ぐらいから、天候の良い日には庭園も訪問者で賑わうようになってきました。庭園の整備も順調に進んでおります。そしていよいよアナトリア考古学研究所の発掘シーズンも始まります。(2012年4月11日)

2012年春 (1) 2012年春 (2) 2012年春 (3) 2012年春 (4)
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